ハイゼンベルク、確率の宇宙を打ち立てる(1927年)「不確定性原理」

ハイゼンベルクの「不確定性原理」は、量子力学の世界観を根本から変えた「決定的な一撃」です。
ここでは
なぜそんなことが起こるのか?
何を意味するのか?
古典物理学の何が壊れたのか? を解説します。
量子の世界は「波」として存在している(シュレーディンガー)
前野コラムでは、電子は
✔︎ 点ではない
✔︎ 位置がボヤッと広がった雲のような「波」
✔︎ 存在確率で決まる存在
として理解されるようになりました。
この「電子は波」という事実が、
実は「測定すること」に関してとんでもない問題を引き起こします。
古典物理学の常識:位置と運動量は同時に測れるはず(ラプラスの悪魔)
古典物理学では、物体はハッキリした点として存在し、
✔︎ どこにあるか(位置 x)
✔︎ どんな速さで動いているか(運動量 p = 質量×速度)
は、原理的にどちらも精密に測れると考えられていました。
つまり、
「世界は完全に決定論的」
(もし初期状態を知れば、未来も全部予測できる)
という世界観(ラプラスの悪魔)
ハイゼンベルクが壊したものー完全な決定論の崩壊
ハイゼンベルクは量子の計算を続けるうちに、
決定的な結論にたどり着きます。
▶ 位置 x と運動量 p は、同時に正確には測れない
これは技術の限界ではなく、
宇宙の本質的な性質です。
■ なぜ同時に測れないのか?
電子は「波」として存在しているので、
電子の状態には「波の形」があります。
● 位置を正確に知ろうとすると・・・
例えば、波をギュッと絞って、
場所を一点に集める必要があります。
→ すると、波は「バタバタ」と大きく振動し、
「運動量」がハッキリしなくなる
(波としての広い範囲の運動量の可能性が混ざる)
● 運動量を正確に知ろうとすると・・・
波をゆっくり滑らかに伸ばす必要があります。
→ すると、波は広がり、
「位置」がハッキリしなくなる
(分布が広がり、場所が特定できなくなる)
■ つまり・・・
位置を正確に測ろうとするほど、運動量は不確かになる。
運動量を正確に測ろうとするほど、位置は不確かになる。
これが
不確定性原理(不確定性関係)
です。
数学的には、
Δx × Δp ≥ ħ/2
と表されます。
(Δ:デルタは「誤差の幅」「不確かさ」)
・Δx=位置の不確かさ
・Δp=運動量の不確かさ
・ ħ(エイチバー)=ディラック定数(プランク定数hを2πで割ったもの)
「世界は確率でできている」という結論
この原理が意味するものは、想像以上に深いです。
✖ 技術の問題ではない
(顕微鏡を良くすれば測れる、という話ではない)
✖ 人間の能力の限界でもない
(神様でも測れない)
✔ 宇宙の本質的な構造である
(量子の世界では性質そのものが確率で決まる)
つまり、
自然界は、根本的に確率的であり、
完全に決定論的な未来など存在しない。
ハイゼンベルクはこれを数学的に示しました。
古典物理学の崩壊:なにが衝撃だったのか?
古典の世界観はこうでした。
✔︎ 世界は因果律で動く
✔︎ 初期条件が精密で正確なら、未来も完全に予測できる
✔︎ 神がすべての粒子の位置と速度を知れば、宇宙は決定される
これを信じていた人たちに対し・・・
ハイゼンベルクはこう言った。
▶ 宇宙はそもそも「あいまい」にできている。
未来は確率でしか表せない。
これは科学だけでなく哲学も揺るがす革命でした。
量子力学は「確率の宇宙」という新時代に突入する
ハイゼンベルクの不確定性原理によって、
• 原子の構造
• 分子の安定性
• 電子軌道の形
• 量子トンネル効果
• 量子コンピュータの原理
など、
現代の量子現象が全て説明できるようになります。
そしてシュレーディンガー方程式も、
この原理を内包した「確率の波」を扱うものとして位置づけられました。
ハイゼンベルクの不確定性原理は、
「位置」と「運動量」は同時に決まらないという
宇宙の根本法則であり、
世界が確率でできていることを示したのです。
これが量子力学を「確率の物理学」へ導いた決定的な瞬間でした。


